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講演の様子

2010/7/16 首都大学東京 
秋葉原サテライトキャンパスセミナー 

日時: 2010年5月26日(水) 17:50〜19:20
会場:秋葉原ダイビル12階 首都大学東京会議室

 今年度2回目の首都大学東京秋葉原サテライトキャンパスセミナーは、「ショウジョウバエを用いた先端化学」と題して、遺伝子分野についての講演が行われました。
初めに相垣教授から、遺伝子についての基礎知識と、遺伝子それぞれの役割を調べるための方法とショウジョウバエの有用性についてお話をいただいたあと、特任研究員の佐藤博士からは、ショウジョウバエを使った化合物の機能評価システムについて発表がありました。

 
『ショウジョウバエの遺伝子操作と疾患モデル』
  都市教養学部 理工学系生命科学 相垣敏郎教授
  

 人間の体は60兆個もの細胞から出来ていて、その細胞のひとつひとつにDNAという紐状の構造をした物質があります。細胞1個に含まれるDNAの長さは2mで、それが60兆個ですから、総延長は1200億km。想像もできない長さです。
 ゲノムという言葉はお聞きになったことがありますか?ヒトをヒトに、ネコをネコにするために必要な遺伝子のセットをゲノムというそうです。ヒトゲノムの解析は2003年に完了しましたが、これは配列情報の解析が完了したということで、どの配列がどのような意味をもつのかという機能情報についてはまだ研究中とのことです。
 そしてこの遺伝子の機能を特定するために、遺伝子のある特定の部分の働きを抑制したり、反対に強制的に働かせて個体に現れる影響を調べるという方法がとられています。
そこで登場するのが「ショウジョウバエ」です。「ショウジョウバエ」の持つ遺伝子の70%がヒトの遺伝子によく似ていることから、ヒトの遺伝子の機能を明らかにするのに役立つというわけです。他にもショウジョウバエには「飼育が容易」「世代時間が短い」(2週間で次世代が生まれます。)「安いコスト」「高度に発達した遺伝学的技法の蓄積」といった利点があります。
 相垣教授はショウジョウバエの遺伝子を強制発現するシステムを用いて、効率よく変異体を作製する手法を開発し、遺伝子の働きの解明や、アルツハイマーやパーキンソン病、ハンチントン病などに有効な化合物を研究するのに役立てているとのことでした。

『ショウジョウバエを用いた化合物の機能評価システム』
  理工学系生命科学 佐藤由紀子特任研究員


 続いて、佐藤特任研究員が、ショウジョウバエを使った化合物の機能評価について発表されました。
 化合物とは2種類以上の元素から出来ている物質をさします。医薬品などは、病気を治す化合物といえます。
 新薬の開発では、どのような化合物がターゲットとする症状に有効なのかを検証しますが、通常行われる培養細胞やマウスを使った化合物評価では、1.細胞のレベルでは有効であっても、個体では有効でない場合がある。2.個体レベルで毒性を発することがある。3.個体として使用するマウスはコスト高である。などの問題点があります。
 この点ショウジョウバエは遺伝子の過剰発現や機能欠損により変異体の作成が容易で、小さなスペースで実験できる個体であるという利点があります。
 佐藤研究員の研究室では、独自にショウジョウバエの飼育容器や、この飼育容器をそのまま使える行動測定ロボットなどを開発し、より効率よく化合物の機能評価ができるような工夫をしています。
 例えば、ポリグルタミン化されたヒトのハンチントン遺伝子をハエに注入し運動機能障害を人工的に起こし、さらにこれらのハエに化合物の入った餌を与え、運動機能障害が回復する化合物を探すという研究では、この測定器を使うことにより大量のハエの動きを自動測定することが出来、化合物の評価を効率的に行うことができました。
ショウジョウバエの学習能力の実験では、痛みと香りを利用し、Aという香りには電気ショックを、Bの香りには電気ショックがないことを学習させたあと、両方の香りをかいだ時にどのような行動を起こすのかを調べたところ、学習記憶に必要不可欠な酵素PKAの活性が下がったPKA変異体のショウジョウバエは記憶がよいということがわかるなど、ショウジョウバエによる機能評価は運動機能・寿命・生存率のほか、学習・記憶や嗜好、睡眠など幅広く、新機能の発見につながっています。
佐藤特任研究員は、「生命現象のメカニズムを明らかにする基礎研究はもちろん、その成果を世に出す応用研究にも力をいれており、企業の開発力も取り入れて難病・生活習慣病の治療などに役立てたい」との力強い言葉で発表を締めくくられました。


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