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  第9回 (株)日本テクノロジーベンチャーパートナーズ 取締役
      森 拓哉氏/手嶋 伸也氏            


第9回産学連携レポートは、秋葉原ダイビル産学連携フロア唯一のベンチャーキャピタル(以降VC)である
「日本テクノロジーベンチャーパートナーズ」(以後NTVP)の森氏、手嶋氏にお話を伺いました。


■NTVPの理念や特徴(他のベンチャーキャピタルとの相違)について教えてください。

 「世界に通じる日本発の技術ベンチャー」を生み出すことを理念とし、1998年7月に現代表の村口和孝がNTVPを設立。同年11月に日本初の投資事業有限責任組合を設立登記いたしました。
従来の株式会社型VCではなく、個人のベンチャーキャピタリストが運営するVCファンドにこだわったのは、新規の分野を開拓するベンチャー企業を支援するには、日本型の合議制で投資を決めるやり方ではなく、個人が投資を決断し、その予測と未来への熱い思いで長期的に支援するのでなくては、ベンチャーは生み出せないと考えたからです。
 この点がNTVPのこだわりであり、自ら投資組合を設立し投資し、投資の意思決定に権限と責任を持ち、役員となって事業の進捗を監督するなど重大な責任を負う、米国型のベンチャーキャピタリストとして情熱をもってベンチャー育成に携わっています。


■NTVPのビジネスモデルとはどのようなものですか?

 従来の日本型のVCというと、ある程度出来上がっている上場直前の会社に投資するというイメージが大きいと思いますが、NTVPでは会社を創業する段階から深く関与し、支援しています。
 具体的には、投資組合(ファンド)はパートナーシップに基づいており、出資をいただいた資金に対して、無限責任組合員(ジェネラルパートナー)である村口個人が責任を持って投資・運用に当たります。ファンドのリターンは出資先ベンチャーの株式上場等に伴うキャピタルゲインであり、その他に一定の管理報酬が無限責任組合員に対して支払われます。一般のVCの多くでは、株式会社がファンドの運用責任を担っています。村口が無限責任組合員という肩書きをもつのも、投資先の運用、意思決定など組合に係る業務全般についてすべての責任を負うからなのです。



■ハンズオンというのも御社の特徴だと思いますが、その功罪についてどう見ていますか?

 スタートアップ期から関わることが多いので、最初は中に入ってお手伝いをする機会が多いのですが、ある程度軌道に乗ってくれば、出資先の会社が幹部やスタッフを充実させるのに合わせて関与の仕方が変わってきます。オペレーショナルな業務については出来るだけ早くハンズオフしてもらいたいというのがNTVPとしての気持ちです。というのもNTVPが関わらなければ立ち行かないというのでは一人前の企業とはとても言えないからです。その会社の従業員が力をつけていくことが本質なので、出資先の会社とNTVPとがつかず離れずの距離感を維持していくことが難しいところです。


■10年後、投資先をどのようにするのか理念はありますか?

 日本の一般的なVCでは、投資と回収という資金フローそのものに偏っているところがあると思いますが、NTVPの場合は「日本発、世界を驚かす企業」を実現するために、経営面から関与して起業家と一緒に汗を流すことを方針としています。出資先企業を上場させることが重要なミッションですが必ずしもゴールではありませんし、上場しても持ち続けている場合もあります。上場が困難な場合でも、その会社がもう一段伸びていくためにどうすべきか、どうあるべきかを投資家としての視点だけでなく一緒に考えていく、そしてその姿勢が、NTVPを信頼してもらう、村口個人を信用してもらうことにつながっていくのではないかと考えています。
 投資先を売るといった選択肢に関しても、その企業がこの先伸びていくためによいか悪いかを判断基準にしています。シリコンバレーでも通用するような会社になるためには、必要であれば所有している株式を売るという選択肢もあるわけです。


■ダイビルにNTVPを構えた理由

 秋葉原は先端技術の集まる場所であり、「技術に立脚したベンチャーを育成していこう」とするNTVPの拠点を構えるのにふさわしいマインドのある場所だと考えました。また、「アキハバラ」は海外でも通用する象徴的な場所として評価しています。ベンチャーの立上げ期には事業実験を繰り返す必要があり、エレクトロニクスの世界ではまさに秋葉原がその場所を提供してきたといえるでしょう。


■投資先について教えてください。

 現在、関東圏および徳島の会社を中心に出資しており、投資先は28社です。
そのうち上場しているのは、
○「株式会社ディー・エヌ・エー(2005.2上場)」
ネットオークション、携帯SNS運営。代表的なものに携帯総合ポータルサイト「モバゲータウン」がある。

○「インフォテリア株式会社(2007.6上場)」
 先進のXML技術をベースに様々なデータ交換・システム連携を容易に実現するソフトウェアの開発・販売を行う。

○「株式会社イメージワン(2000.9上場)」
 医療診断画像・衛星画像に特化した画像システムを手掛ける。

の3社です。秋葉原に移った2005年以降では14社に投資しています。


■人材育成について教えてください。

 NTVP独自の社会貢献事業として、青少年起業体験プログラム(対象は高校生、大学生、大学院生)を行っています。
これは、会社設立プロセスを実際に体験することで資本主義経済の仕組みや、自ら考え行動する力を育てることを目的としています。
 内容も単なる模擬店ではなく、公認会計士や、銀行員、ベンチャーキャピタリストの指導のもと「ビジネスプランの作成」「資金調達」「株主総会」など実際の起業と同じようなステップを踏んで行きます。お蔭様で、郁文館、品川女子高校、成蹊大学、慶應理工学部などで毎年実施し、喜んでいただいています。受講していただいた学生さんはトータル5千人、秋葉原に移ってからの5年ということでは4千人もの学生さんに受講いただいています。
 
 
■今後VCはどのようになっていくのでしょうか

 業界全体が今岐路に立っていると思います。今までのように何でも上場できるような時期は終わり、収益を稼ぎ出すビジネスモデルを一度見直す時期に来ているのです。
一方で新しい事業を生み出す必要があり、VCは自分たちの役割を整理し直し、もう一度1歩1歩進んでいくべきなのだと思います。フロンティア領域で投資先が顧客としっかり向き合うことの大切さをVCとして一緒に追求していくことが非常に大事でしょう。




■取材を終えて

 村口氏のベンチャーキャピタリストとしての経験とこだわりの中から生まれ、独立個人(independent individuals)と深い関与(hands on)を基本コンセプトとする日本テクノロジーベンチャーパートナーズ。企業活動のどの場面にも理念へのこだわりが感じられました。
岐路に立つVCですが、投資先会社を世界に通じる企業にしたいという熱い思いを持っている日本テクノロジーベンチャーパートナーズに更なる活躍を期待したいと思います。

取材写真


【取材日:2009年12月14日(月)】

@産学交流ゾーン

【写真】
(株)日本テクノロジーベンチャーパートナーズ
             森 拓哉氏/手嶋 伸也氏 

(写真をクリックいただくと取材の様子がご覧いただけます)

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