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     第11回 デジタルハリウッド大学大学院

           奥芝徹氏、加藤孝信氏、宮坂俊夫氏

第11回産学連携レポートは、デジタルハリウッド大学大学院 奥芝徹氏(広報Gr.マネージャー)、加藤孝信氏(事業開発部 地域連携センター マネーシャー)、宮坂俊夫氏(研究員)にお話を伺いました。

■デジタルハリウッド大学大学院の特徴と産学連携

 デジタルハリウッド大学大学院は日本でも数少ない株式会社立であり、その教員の多くはコンテンツビジネスの第一線で活躍する企業人です。コンテンツは技術の進化が早く、常に第一線で働いている方から講義を受けることが非常に重要です。企業と大学院を結びつけるといった意味では、まさに産学連携の象徴のような大学院であり、大学院での学び自体が産学連携を具現化しているとも言えるでしょう。そんなデジタルハリウッド大学大学院では、産学連携というものをどのようにとらえているのでしょうか?
大学院広報の奥芝氏によれば、デジタルハリウッド大学院はデジタルを用いた次世代のビジネスリーダーを育成することを目的としており、大学院ではコンテンツを媒体としたビジネスを学びますが、2年間の大学院を修了したあとも研究テーマをビジネスとして発展させていく方も多いのだそうです。そこで生まれたビジネスがある意味、デジタルハリウッド大学院の産学連携になっていると考えられ、コンテンツビジネスは事業化しやすい分野でもあるため、大学院発のベンチャーはかなりの数に上っているとのことでした。
また地域連携センターの加藤氏によれば、デジタルハリウッド大学大学院では教員があるひとつの専門領域の研究に没頭しているわけではないため、他大学のように、研究室にあるシーズをアピールして企業と産学連携を行うといった形での産学連携はほとんど行われていません。デジタルハリウッド大学大学院では、企業人としての教員の持つ問題意識が、カリキュラムに反映されている大学大学院の授業そのものが産学連携であると考えています。
但し、最近は特定企業から特定の分野で先進的なコンテンツやWebサイトを一緒に作っていきたいといった要望が年に1〜2件ほどはあり、従来型の産学連携も少しずつすすんでいる状態とのことでした。


■コンテンツ分野の産学連携ならではの課題はありますか?

 デジタルハリウッド大学大学院は大学院での学びの中から様々なコンテンツが生まれるなど、プロダクションのようなところもあります。ところが大学院の中で生まれたコンテンツ(知財)の所有のあり方について、まだまだ法律的に未整備なところが多く、その整備が今後の課題だと考えています。一方、アメリカの大学では、生み出されたコンテンツについては大学に帰属するように制度を整備しており、日本でもそのような方向に持っていけたらいいとは考えていますが、現状ではむずかしいと思います。



■どういった方々が学びにきているのでしょうか?

 学生ももちろんいますが、会社にコンテンツ分野の知識を還元するために、企業に職を置きながら学ぶ方、スキルアップを目指して来られる方など幅広い社会人の方にも来ていただいています。


■『スクイーク(Squeak)』を使った小中学生向けワークショップについて

 デジタルハリウッド大学大学院からうまれた産学連携のひとつとしてご紹介いただいたのは、デジタルハリウッド大学大学院メディアサイエンス研究所・研究員の宮坂氏の活動です。宮坂氏はスクイークを使った子供向けICT教育を行っているとのことですが、ワークショップに取組むきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
  2004年eラーニングを研究テーマにデジタルハリウッド大学院で学んでいた宮坂氏は特ゼミというビジネスの立ち上げをテーマにしたゼミで、子供向けのICT教育のビジネスプランを考えることになり、そこで出会ったのが、『スクイーク』でした。『スクイーク』はアラン・ケイによって開発された、小学生でも使える教育用のオープンソースソフトウェアです。スクイークは先生が子供に教えるという一方通行の教育ではなく、子供自らが自分なりの理解を組み立て、答えを導き出すというコンセプトで作られており、宮坂氏のグループはこのコンセプトを活かす『スクイーク』をつかった教育プログラムを開発し、実際に子供を集めてワークショップを開催し、その結果をプログラムに反映させてきました。
宮坂氏の活動はこのゼミでの活動を発展させたもので、活動を始めて現在6年目になります。具体的な活動としてはデジタルハリウッド大学大学院メディアサイエンス研究所の研究員として昭和女子大学付属昭和小学校、東芝科学館などで小学生向けのワークショップを年間25回ほど行っているとのことでした。
ビジネスとしては、むずかしいところもあるようですが、社会起業家のような立場で小中学生のICTリテラシーの向上に貢献したいと考えているそうです。これは従来の産学連携の広い意味での出口が、共同研究成果の論文発表や特許出願、新製品開発やベンチャー企業といったことだけではなく、NPO活動とかボランティアといった社会企業家の活動範囲をもカバーするということで、コンテンツやソフトウエア分野の特徴かも知れません。  『スクイーク』はオープンソースソフトウェアであり、世界中の技術者が今でもよりよいプログラムに向けて改良を重ねています。
『スクイーク』については、
「みんなで楽しくスクイーク」   http://etoys.jp/をご覧ください。



■起業に対しての大学院の支援はありますか?

 起業に関しては、一部大学院から投資することもありますし、教授のなかでもファンドをお持ちの方もいらっしゃいます。当大学院ではビジネス・クリエイティブ・ICTの3本柱を融合させることを目的としており、その手段として起業という選択肢もあると思います。また起業ではなく、クリエイターとして一本立ちするということに対しては、まさに専門スクールが、その方向に舵をきっています。出口はフリーランスとしてやっていけるように教育していこうということです。



■思いはこどもたちへのICT教育へ

 小中学校でクリエイティブよりのICT教育をしているところは少ないようです。岐阜県の教育委員会が取組んでいるそうですが、その意味では、宮坂氏のスクイークによるワークショップは画期的な取り組みですし、ますます広がっていって欲しいと思いました。「ゆくゆくはデジタルハリウッド幼稚園・小学校を作りたい」といったお言葉にもICT教育に対するデジタルハリウッド大学大学院の思いを感じることができました。 
 今後、日本がデジタルコンテンツの世界でますます輝いていくためにも、デジタルハリウッド大学大学院のようなデジタルコンテンツに特化した専門性の高い大学や大学院の必要性は高まるばかりでしょう。そこで生まれる産学連携の取り組みにも今後も注目したいと思います。


取材の様子


【取材日:2010年9月13日(月)】

@産学交流ゾーン

【写真】
   左から デジタルハリウッド大学大学院
            奥芝氏、宮坂氏、加藤氏

 (写真をクリックすると取材の様子がご覧いただけます。)
              



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