2010/9/27 AICOS2010 キックオフ講演
いままでのアキバテクノクラブ交流会よりさらにイノベーションを特化させたオープンセミナーとして、再スタートし、広くご参加いただけるようになりました。
「プロテクノロジー」から「プロビジネスモデル」へ
〜プロイノベーション時代で事業を決める技術・標準・
ビジネスモデル〜
妹尾 堅一郎氏
(アキバイノベーションカレッジ 校長役)
(東京大学特任教授、NPO産学連携推進機構理事長)
■ 円盤ビジネスからラインビジネスへ
「テクノロジーだけでモノが売れる時代は終わった」と、いつも妹尾先生が強調されるフレーズでキックオフ講演が始まりました。産業競争力モデルが変わり、いまや日本は韓国に抜かされ、台湾にも追い抜かされそうな状況にあり、まさにプロイノベーションの時代となった。そこで今回は、イノベーションカレッジにふさわしく専門人材育成の観点から、妹尾先生から会場の参加者へ問いかけスタイルで講演が進みました。
最初の質問は、「VHSとβマックス、どちらが負けたのか?Blu-rayとHD-DVD、どちらが勝ったのか?」「なぜβマックスは技術で勝って事業で負けたのか?」、会場からは、「VHSがソフトのコンテンツの多さで勝った」、「人気コンテンツである映画がテープ交換なしで録画できる120分規格を作った」などVHSの勝因に対する発言があり、「家庭用ビデオの市場形成を行ったことが勝因であった」と妹尾先生はまとめられました。
その背景には、βマックスはソニーの盛田氏が打ち出した「Time
shift」というコンセプトの元、TVからの録画という機能が首都圏では大当たりしたが、N.Y.では受信画像がきれいでなかったため普及せず、映画のビデオが自宅で見られる様にレンタルビデオ業界とのサービスネットワークを作ったVHSがハリウッドを味方につけて急激に普及したという経緯があり、ソフトのコンテンツがあった方がいいということでデファクト(慣性的な標準)が変わったという説明がなされました。
勝負は、ソニーがあきらめてβマックスの生産をやめたことで、VHSが勝利の構図だが、VHSの技術の大部分はβマックス技術のライセンス(特許)だったので、VHSが売れれば売れるほど、ソニーには多額のライセンス(特許)料が入り、その後ソニーはVHSを売り始め、首位を独走したこと、βマックスは技術的には勝っていたので業務用では残っている、といった事実からみて本当に勝ったのはどちらだったか、ということ再考しなけばならない。
このように知財マネージメントについては、標準化、サービスネットワーク、コンテンツなどが関係していて…技術だけで勝てる状況でないことは、過去の事例としてあったわけで、ここを学ばないといけないと力説されました。
次の質問として、「Blu-rayとHD-DVDはどちらが勝ったのか?」、現在では東芝が降りたからBlu-rayが勝った状況になっているが(アライアンスの陣営であるハリウッドがBlu-rayについたため)、東芝の撤退発表の翌日に株価が高騰したのは、市場は消耗戦に入らないでよかったねという評価の現れであり、実際Blu-rayの普及率はさほど進んでいない。その後東芝はHD-DVDの技術を中国に売り、家電下郷政策(農村に家電を普及させる)にのって、国際標準から降りたが形を変えて復活した。(ハリウッドもコンテンツを提供すると発表)
このように議論する時のコツは、マーケットの視点、ユーザーの視点で考えることであり、原点に立ち返ること。たとえば、映画はいまやインターネットで見る時代となり、DVDの円盤ビジネスからインターネットというラインビジネスへ変わりつつあり、円から線へ変化している。こういう状況に気づいて事業戦略を立てないといけない、とのことでした。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
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