2010/12/20 AICOS2010 vol.4
『次世代自動車は本当に充電池が要るのか?
〜モータ/キャパシタ/ワイヤレスで描く未来のクルマ社会
〜』
堀 洋一氏/東京大学大学院
新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻 教授
<トークセッションモデレーター>
妹尾堅一郎氏/アキバイノベーションカレッジ 校長役
東京大学大特任教授、NPO産学連携推進機構理事長
■電車のようなクルマ?!
第4回目となるAICOSは、東京大学の堀教授にお越しいただき、電気自動車についてパワーやエネルギーの考え方からモーション制御まで、楽しくも次世代のクルマ社会について考えさせられるご講演となりました。
冒頭に妹尾先生から次世代自動車はスタンドアローンではなく、充電系や情報系とのネットワークとして捉えるべきであり、充電池搭載型だけを考えていていいのか?と疑問を投げかけられAICOSがスタートしました。
電気自動車が電力系統につながることを考えれば、リチウム電池ではなく、エネルギー供給という視点に立ち、都市部では「ちょこちょこ充電しながら走る電車のようなクルマ」が普通になるとの堀教授のお話は、わかりやすくも驚愕的な提言でした。そこでは、「電池からキャパシタへ」の移行と「ワイヤレス給電」が実現されるそうです。物理電池といわれる電気二重層キャパシタには、
(1)寿命が半永久的(100万回の充放電)
(2)急速充放電が可能(数十秒)
(3)材料の環境負荷が小さい
(4)端子電圧から残存エネルギーがわかる、という電池にはない極めて優れた特長があるそうです。パワー密度は電池をはるかにしのぐものの、エネルギー密度はリチウムイオン電池の約1/10であるが、走行には十分だと思われるとのこと。当然自動車メーカーも電池以外の研究開発も推進しており、現在ワイヤレス給電への動きが活発になってきているそうです。
堀教授は元々「モーション制御」の研究に携わり、滑りにくい車を作れば、タイヤの厚さを半分にして、燃費は倍になるなど電気モータの特長が、「電気自動車の本当のメリット!」に活かせることに気づかれたそうです。
鉄道はインフラからエネルギーをもらって走るが、車はエネルギーをもらわないで走っている。しかし、車ももはやナビやGPSなど情報インフラにつながっている状況の中、エネルギーだけ独立しているのはおかしいと堀教授は指摘されています。
上海では数年前から街の景観を損なう架線バスからキャパシタバスへの移行が進んでいて、バス停で停まるとパンタグラフが上がり、2分で充電完了する仕組みとなっているそうです。堀教授の研究室でも開発したC-COMSは30秒の充電で20分以上走り、キャパシタの実力を実証しています。ただ、まだまだキャパシタは知られていない状況であり、月1回開催しているキャパシタフォーラムもキャパシタの認知度が低いために、活動しにくくなっているが、実際にキャパシタの利用状況は増えており、たとえばリコーのコピー機では、消費電力が70%から30%となるなど、一部有効に利用され始めている様です。
これからの研究テーマとしては、エネルギー供給において、スイカと同じ13.56Mhzや2.45Ghzなどの周波数を使ったワイヤレス給電のシステム開発だそうです。方式としては、電磁誘導や磁気共鳴、マイクロ波やレーザーなどがあるとのことです。
そして最後にご専門のモータ制御についてのビデオを拝見し、電気自動車の本当のメリットは、さきほど指摘した様に電気モータの特長そのものであり、具体的には3つの特長があるとの説明です。
1.トルク応答がエンジンの2けた早い。→トルクを垂下させる粘着制御を行うことでタイヤがすべりにくくなる。
2.モータは分散配置できる。→4輪独立駆動4WDにすれば独立トルクを出せる。
3.発生トルクが正確に把握できる→タイヤから路面に伝わる駆動力を容易にすることができる。
未来のクルマ社会では、確かに「おじいさんの時代にはガソリンスタンドでガソリンを給油して走っていたんだって」と言われる時代になりそうですね。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
|