2014/3/20
2013年度第11回アキバテクノクラブオープンセミナー
(日本Androidの会イベント前夜祭)
基調講演:後藤 真孝氏
〔独立行政法人産業技術総合研究所 首席研究員〕
テーマ:
『歌声合成技術と音楽理解技術が切り拓く未来』
講演:嶋 是一氏
〔特定非営利活動法人日本Androidの会 理事長〕
テーマ:
『音楽情報処理技術がアンドロイド端末に
及ぼす影響』
■ 音楽の情報処理技術とは?
本年度最終の第11回オープンセミナーは、3月21日に秋葉原ダイビル2F&5Fおよび秋葉原UDX 2F&5Fで日本Androidの会が開催する「ABC 2014 Spring」の前夜祭として位置付けられ、音楽情報処理技術の研究分野における第一人者であり、エバンジェリストとも呼べるような活躍をされている産業技術総合研究所の後藤真孝氏と、携帯キャリア系ソフト会社で開発の第一線で活躍し日本Androidの会の理事長でもある嶋是一氏の講演とトークセッションという形で開催されました。
わが国は歌声情報処理技術の先進国であるがその背景は、2007年に歌声合成ソフトVOCALOIDに基づく「初音ミク」が発売され、歌声だけでなくキャラクタという身体性を持ち合わせたことでクリエータの創作意欲を引き出したこと、キャラクタに関連する権利が的確に解放されたことで、誰でも自身の「初音ミク」を創り出して歌わせ踊らせることが出来るようになったこと、さらに動画コミュニケーションサイト「ニコニコ動画」によって自作の曲・歌・踊りなどの創作物を公開してフィードバックを受ける環境が普及したことで、世界に類を見ない発展を遂げることとなった。
現在VOCALOIDに関連するオリジナル楽曲は11万曲以上が公開されているが、これらの楽曲から、歌ってみた、弾いてみた、踊ってみた、PVのような様々な形態で「N次創作」と呼ばれる派生の連鎖が起きて、52万以上もの派生動画が生み出されている。
さらに将来の自動創作と自動鑑賞の可能性の議論から、音楽がもたらす感動の要因に関する仮説として、(1)コンテンツ自体の感動(コンテンツそのものが引き起こす感動)、(2)オリンピック的感動(生身の人間が創作しているからこその感動)、(3)文脈的感動(コンテンツが誕生した社会的、文化的、個人的背景等による感動)が少なくとも絡み合っていることが議論された。
一方、音楽理解技術に関しては、能動的音楽鑑賞サービスSongle (http://songle.jp)と音楽視聴支援サービスSongrium (http://songrium.jp)の二つのWeb上の無料サービスを公開して研究開発中であることが紹介された。音楽コンテンツがデジタル化されたことでもたらされる真の価値を引き出すべく今後もチャレンジし、音楽の楽しみ方の未来を切り拓いていくという抱負が力強く語られた。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
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