2016/7/15
2016年度第3回アキバテクノクラブオープンセミナー
【講師・モデレーター】
大野 秀敏 氏/アプルデザインワークショップ 代表取締役 所長、東京大学名誉教授
【登壇者】
伊藤 ちえ子 氏 /株式会社TESS
(足こぎ車椅子『COGY』の開発)
内山 久美子 氏 / 株式会社ぱるぱる
(電動車椅子『ぱるぱる』の開発)
清水 宏泰 氏 / 株式会社桐生再生
(低速電動コミュニティバス『マユ』を使ったまちづくり)
久保 登 氏 / 神奈川大学非常勤講師
(用途別小型電気自動車の研究・開発)
テーマ:<小さい交通>が都市を変える
■ <小さい交通>が補うモビリティの姿
2016年度第3回目のオープンセミナーは、超小型モビリティ、電気自動車、シニアカー等の<小さい交通>を少しでも早く実現することを目指す人々の交流の場となる「ネクスト・モビリティ・コミュニティ」との共催により、『<小さい交通が都市を変える>マルチ・モビリティ・シティをめざして』の著者の一人である、アプルデザインワークショップ代表取締役所長で東京大学名誉教授の大野秀敏氏と、この本に登場する<乗り物>の開発者・運営者4名にお越しいただき、未来の都市とモビリティのあり方について、開発の苦労話や今後の展望も交えて共に考える場となりました。
はじめに大野秀敏氏より、超高齢化社会となる我が国の地方都市を中心として、主に車を運転できない高齢者のモビリティ確保に必要となる<小さい交通>の意義について、わかりやすく説明をいただき、以下にその概要をお伝えいたします。
・車と幹線道路、新幹線、飛行機といった<大きい交通>によってモビリティシステムの再編を重ねてきた我が国は、特に地方都市において、車がなければ生活のできない社会を形成してきた。今後の更なる人口減少により、公共交通の整備も採算に合わない過疎地では、運転免許を返納した高齢者の移動の手段は奪われ、「買物難民」と化す。拠点地区へ都市機能を集約するコンパクトシティの試みも、こうした過疎地高齢者の移住支援に向けた財源が逼迫することから、一朝一夕では実現できそうにない。
・こうした地域で、「歩き」と「自動車」という2つのモビリティモードを補完するものとして、<小さい交通>が脚光を浴びるものとなる。それは、「物理的に小さく、身体に近い大きさ」のため、歩行者との共存、駐車スペースの小型化、自由気侭な移動、自然を感じながらの移動を可能にする。また、「歩行に近い遅い移動速度」のため、仲間と会話も楽しみながらのゆっくりとした街の回遊を可能にする。更に、「筋力をサポートする小さい動力」とすることで、無理なく自らの体を使って移動し、身体機能の衰えに対する予防となる。最後に、「小さい企業や個人でも作れ、また、所有できる」ため、起業を通した地域産業の振興にも役立てることができる。
(写真をクリックいただくと講演の様子がご覧いただけます)
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