2021/8/26
2021年度
第4回アキバテクノクラブオープンセミナー
講師:小幡 績氏/慶應義塾大学ビジネススクール准教授
テーマ:「アフターバブル 近代資本主義は延命できるか」
■ 講師のキャリアから生まれた講演内容
アバンアソシエイツとの共催で行われた今回のセミナー、講師の小幡氏は経済学者であるが、財務省やIMFでの勤務経験を経て国際的な投資家の行動心理を理解した上での持論を展開されている。今回の講演でも講演テーマの枠を越えて持論を主張され、ネット上ではあるが聴衆はその魅力の虜になった2時間半の講演となった。
■ バブルとは何か
バブルとは、流動化したものが群れること、と小幡氏独自の定義を示され、さらにバブルは短期、中期、長期の3つの時間軸の異なる波に分けられると論じた。
短期バブルは、我々がバブルと普通に思っているもので、投資家の欲望が群がることで金融商品が高騰する現象が典型であり、金融的な現象であるが、中期のものは、実体経済も膨張の波となることが必要で、それには、1990年前後の社会主義諸国の崩壊から市場経済への流入という構造変化により起こることが多い。さらに、長期のバブルとは、実は近代資本主義そのものがその一例であり、我々は15世紀末以降、長期バブルの波の中にいると説明し、この長期的なバブルが終焉を迎えているのが現在ともいえると主張された。これらの話を、わかりやすい言葉で実例を挙げながら説明をされた。
■ 我が国の経済はどうなる
我が国は、経済も企業も、世界的には非常に特異な行動原理によっている。
たとえば、企業は、存続を目的とし、利益の最大化に興味がない。その結果、リターンを得るためにリスクをとる、という行動はとらず、その結果、リスク概念が希薄になり、社運を賭けて、とんでもないリスクをとってしまい、すぐ破綻の危機に陥ってしまう。東芝もシャープも日産も、問題の根底はここにある。
しかし、もしかしたら、長期バブルが崩壊し、新しい中世という時代になれば、むしろ、このような日本の価値観、行動原理とが優位性を持つことになるかもしれない。
■ 懇親会はネットでも可能
講師の小幡氏は、お人柄が明るくコメンテータの方々ともお知り合いとのことで、講演から質疑応答になってもトーンは変わらず、聴衆もそのまま懇親会に移ってしまったような錯覚の中で、楽しくコミュニケーションされる講師とパネラーの輪の中に入ることを実感する会となった。
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