■ マンガの聖地「トキワ荘」から始まる物語
「トキワ荘」「昭和レトロ館」を見学したのち、KX-SQUAREに場所を移し、「日本が誇るマンガ・アニメ文化の原点を探る〜マンガの聖地「トキワ荘」から始まる物語」と題してご講演いただきました。
まちの活性化にあたり、まずは地域資源の掘り起こしが肝要と荻野氏は語りました。
どの地域にも固有のコンテンツが遍在しており、歴史や生活文化・風習の中に独自のルールとストーリーをもって存在しているので、これを掘り起こして、可視化することで、まちの物語が浮かび上がってくるということです。豊島区ではどのような知層を掘りおこしたのでしょうか。
「トキワ荘」はマンガ世代にはなじみのある言葉ですが、地元には忘れられたコンテンツでした。地元小学校でおこなったワークショップでも「なぜ、トキワ荘が大事なの?」「どうして壊してしまったの?」「なぜ、復元するの?」といった疑問が子どもたちから上がってきたそうです。ワークショップでは、この疑問に答えるために、このまちが、どのような歴史を歩んだ「まち」なのかを解き明かしていきました。 もともと、豊島区は天領であり「ソメイヨシノ」発祥の地でしたが、明治から昭和にかけて、多くの学校が誕生し、池袋周辺は学生の街となりました。学生を中心に池袋モンパルナスや、長崎アトリエ村などのコミュニティもできて、芸術やサブカルチャーに馴染みのよいまちになったというストーリーが浮かび上がってきます。なかでも「トキワ荘」は戦後、21世紀に熱い未来を夢見たマンガ家や編集者が集まる、カウンターカルチャーの発信地でもありました。
まちの活性化は「トキワ荘」を復元して終わりではありません。「トキワ荘」を活用した企画も進んでいます。「としま南長崎トキワ荘協働プロジェクト協議会」が中心となって活動している「トキワ荘大学」では「レトロフューチャー―懐かしい未来―」をテーマに街ゼミナールやトキワ荘大学文化祭など、まちの賑わいを取り戻すための活動をしています。
埋もれていたものを掘り起こし、磨いて、新しい視点で甦らせた「トキワ荘」。今後どのような仕掛けが飛び出すのか楽しみです。
今回は、トキワ荘を中心とした「豊島区」のまちづくりについてお話を伺いましたが、他にも、鎌倉殿の13人にまつわるプロジェクト、千本桜の世界展など様々な「まちの創生」に関わっている荻野氏。 最後に、日本には「日本書記」「物の怪」などの日本サブカル大系、「源氏物語」「神話」など日本乙女文化大系とも呼べる多くのコンテンツが存在しており、n次創作大国だ。と言われた言葉が印象に残りました。「街を劇場」にするコンテンツに事欠かない日本で、荻野氏が次に手掛けるまちづくりが楽しみになりました。
■ 懇親会
講演会のあとは、お約束の「松葉」での懇親会。「松葉」はトキワ荘住人が足しげく通ったといわれる中華料理店です。店内に貼られたマンガ家の色紙やポスターに囲まれて、マンガ家の皆さんが味わったであろう「ラーメン」をいただきながら、本日の見学会や、講演の話題だけでなく、あちらやこちらへ話が飛ぶ楽しいひと時となりました。
(写真をクリックいただくと講演と懇親会の様子がご覧いただけます)
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