2010/5/26 首都大学東京
秋葉原サテライトキャンパス・セミナー
「糖尿病の予防と治療の最前線」
日時: 2010年5月26日(水) 17:50〜19:20
会場:秋葉原ダイビル12階 首都大学東京会議室
■ 『運動の血糖降下作用』
藤井 宣晴 教授
今年度第1回となる当セミナーは、人間健康科学研究科 人間健康学専攻のお二人の教授による糖尿病についてのご講演となりました。
ヘルスプロモーションサイエンス学域の藤井教授によると、日本人の場合はあまり太らなくても糖尿病になってしまうそうで、疑いのある状態の人も加えると実に成人の17%に当たるそうです。ちなみに、アメリカの肥満者数を調査した時に、大統領選のオバマ氏を支持する州よりマケイン氏を支持する州の肥満率が高く、肥満者分布図と酷似していることが判明するというおもしろい結果となったそうです(写真ご参照)。
糖尿病の治療現場では、運動ほど治療に効果があり副作用の心配のない薬は存在しない、といわれています。具体的には、間接的な効果としては、筋肉でエネルギーを消費することにより糖尿病や高血圧などを引き起す物質を分泌する内臓脂肪が減少すること。その他にも、がんの発症率低下やアルツハイマーの減少、うつの軽減、膵臓機能の亢進などがあるそうです。また、直接的な効果としては、運動による骨格筋の収縮が糖の取込みを促進し、膵臓から分泌されるインスリンの感受性を亢進(血糖を降下)するとのことで、軽いジョギングを数分行うだけでも効果があるそうです。
いままで、血糖値を降下させるホルモンは、生体内ではインスリンだけと考えられていましたが、藤井教授らの研究により、運動をすることでインスリンとは異なった経路を通じて、血糖値を下げることが可能だとわかったそうです。
その細胞内分子がAMPキナーゼであることを発見し、糖尿病治療薬メトフォルミンがAMPキナーゼを活性化させることにより糖尿病に作用することを突き止めたことは、運動生化学研究室の大きな成果と言えるでしょう。ホルモン分泌器官と考えられていなかった筋肉の、新たな役割を検証しつつ、すでにAMPキナーゼ以外にも数種類の分泌ホルモンを発見することに成功されていて、今後の研究成果も期待できそうです。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
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