■廃棄物発電の未来と可能性とは?
次に、朝日新聞記者であり、産総研の新燃料研究外務評価委員でもある杉本裕明氏より、「廃棄物発電はなぜ嫌われるのか?〜廃棄物発電の未来と可能性について〜」というタイトルにて講演が行われました。杉本氏は1991年から環境庁を担当して以来、環境報道を中心に活動を続け、廃棄物、大気汚染、水問題、ダム・河川政策、地球温暖化、自然保護など対象は幅広い。
ゴミ総排出量と1人1日当たりごみ排出量の推移は、どちらもH12年をピークに毎年減量していて、個々の意識の現れかと思われる。また、リサイクル率の高い市町村は、人口10万人以上50万人未満では、1位鎌倉市、2位倉敷市、3位調布市となっており、10位までに東京都の6市が入っている。人口50万人以上では、1位北九州市、2位横浜市、3位千葉市となっており、以下、八王子市、新潟市、名古屋市、姫路市、さいたま市、相模原市と続き、10位に東京都23区分となっている。
H20年度は、発電施設数300に対し、発電効率11.19%で、毎年効率は上がってきてる。さらにエネルギー回収(ごみ処理量当たりの発電電力量)の回収量上位は1位から3位まで大阪府で、東京都23区は8位となっている。
ちなみにドイツのゴミ事情は、まずゴミ収集が有料であり2人家族で月額約3,000円とのこと。自分でごみを持込む「リサイクリング・ホフ」や容器包装のリサイクル「DSDシステム」などのシステムが確立している。さらに有機物の埋立て禁止のため、焼却による熱回収、バイオガス化と焼却の流れが一気に拡大している。ごみ処理は地球温暖化の観点を重視するため、リサイクル率よりリカバリー率に重点をおいているとのこと。
日本は、焼却を害悪視する傾向が強いが、欧州はその傾向は弱い。焼却施設が嫌われるのは、自治体・住民双方に問題があり、迷惑施設を前提に立地検討をすることがおかしいと杉本氏は分析し、この施設ならいいというモデルを造るべきと提言する。学者の間では、リサイクルするより燃料として発電に利用する方が効率的と提唱している。しかし、住民団体からは反対の声が上がり、政治家へ働きかけ、学者たちが提言しにくい環境ができており、非常に憂いているとのことでした。
そして、最後に、首都大学東京都市教養学部教授の吉葉正行氏をコーディネーターに、講演者のお二人と(株)クボタの阿部清一氏と東京23区清掃一部事務組合の柳井薫氏を加え、5名でのパネルディスカッションを行いました。論点は、廃棄物発電の高効率化推進の経緯と現状、廃棄物発電の高効率化促進に対する阻害要因と重要ポイントについて、活発な議論がやりとりされました。その中で阿部氏は「ごみをごみで処理する」と主張され、溶融処理の専門として、リデュースおよびリユースを優先することや、燃料利用などこれからのゴミ処理について提案されました。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
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