2010/12/7
産業技術総合研究所・筑波大学
つくばイノベーション&スタートアップス(TIS)研究プロジェクト
第三回研究会
「アメリカの大学発ベンチャー最新事情(V)MIT、ハーバード大学事例を中心に」
(日本学術振興会「科学研究費補助金」基盤研究「大学公的研究機関におけるベンチャー創出とイノベーション人材育成に関する研究」研究代表者:木村行雄 期間:2010年4月〜2013年3月)
日時: 2010年12月7日(火)
会場: 産業技術総合研究所 大会議室1(秋葉原ダイビル11F)
発表者:木村行雄氏(産総研企画本部産業技術調査室総括主幹、川崎市産業振興財団新産業政策研究所客員研究員、東京都市大学非常勤講師)
2010年12月7日(火)18時半から、産総研11階大会議室2において、上記第三回研究会が開催されました。
シンクタンク研究員・大学教員・広告代理店・他大学研究機関・金融機関関係者等、25名が参加し、アメリカのMIT、ハーバード大、ボストン大学、ミシガン大、フロリダ大学における「大学発ベンチャー」の現状とその創出システムに関しての発表と、参加者の知見やネットワーク等から多様な議論が行われ、盛会となりました。
今回は、まず前回行った「日本における企業(製造業)の近年の状況」「つくば市における製造業」の状況をレビューすることで、日本の製造企業の現状及び、大学研究機関が密集する地域の製造業(企業産業の状況)を確認し、アメリカ事例との比較を行いました。まず、2007年度、2008年度のAUTM(全米技術移転者協会)によるデータの検討が行われ、以下の結論を得ました。
・ 2008年度にはアメリカでは3381の大学発ベンチャーが活動しており、2008年の新規創業数は595であった。2007年度は其々3388、555であり、廃業した企業も多く全体の累計数は減少した。
・ 大学別では、カリフォルニア大学発の企業数が多いが、同大学のデータは10の分校の集積である。単一では、MIT、ユタ大学の2校が突出している(年創出平均20前後)。
・ 今回取り上げた5校の中では、MITにおける研究費、ベンチャー創出数、ライセンス収入が其々突出しており、その他特許の実施数や開示などの数値が大きい。研究費は次いでミシガン大、ハーバード大が多く、ライセンス収入では次いでフロリダ大が多い。
次に発表者による訪問調査により、それぞれの大学の状況が浮き彫りになりました。
・ MITでは、一部の有力教授に関連するベンチャー企業が数社作られている。例えば、Bob
Langer(創薬・テイッシュエンジニアリング), Yet Ming Chiang(エネルギー)のような著名な教員の関連する事例に出資等が行われている。ボストン地区はインキュベーションを大学単体では実施していないが、地域によるサポートが非常に大きい。
・ ハーバード大では、「創薬」を中心としたベンチャー企業が、近年多く作られている。
・ ミシガン大では「ライフサイエンス」のベンチャーが多く、地域の支援も充実している。
・ フロリダ大では大学によるベンチャー企業に対する株式所有制限がゆるく、「医療機器」のベンチャーが多い。一部、株式公開を行った事例も存在する。
・ 全体的に、地域による支援や、大学におけるプログラム(EIRやMBAコースの経営者の参加)、外部のVCやエンジェルの参加、企業の買収が多数実施されている。
最後に発表者から「欧州」(次年度研究会にて発表)の大学研究機関発ベンチャー事例の概要も発表され、日本(特につくば)における「地域の支援」の必要性を再度訴えました。
今回、ご参加頂いた皆様、本当にありがとうございました。
次回は2011年1月25日(火)「サービスサイエンス」に関する発表と議論を行います。
(文責:木村氏)
なお、当日の発表資料につきましては、下記ご参照ください。
■PDF資料■
(写真をクリックいただくと研究会の様子がご覧いただけます)
|