2011/1/19 首都大学東京
秋葉原サテライトキャンパスセミナー
日時: 2011年1月19日(水) 17:50〜19:20
会場:秋葉原ダイビル12階 首都大学東京会議室
『住生活環境の省エネルギー化と
自然エネルギー利用の最前線』
■ 「省エネ住宅の最前線」
都市環境科学研究科 建築学域 教授 須永 修通氏
最近、「ゼロ・エミッション住宅」の研究が盛んであるが、これは住宅内でのエネルギー消費の大幅な削減や建設時のCO2排出量までをもゼロにするというもの。そのキーの一つが「住まい方」であり、住宅の「視える化」の効果にも期待が寄せられています。
ライフサイクルカーボンマイナス住宅(LCCM住宅)も「ゼロ・エミッション住宅」の1つであり、化石燃料消費ゼロを念頭に設計し、必要なエネルギーは再生可能なものを利用する「ゼロ・エネルギー建築=ゼロ・カーボン建築」に含まれます。具体的には、住宅の長い寿命の中で、建設時、運用時、廃棄時において、できるだけの省CO2に取組み、かつさらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時等のCO2排出量も含め生涯でのCO2の収支をマイナスにする住宅とのことです。
現在、国土交通省住宅局の研究開発事業として、一般社団法人日本サステナブル建築協会内に設けられた「ライフサイクルカーボンマイナス住宅研究開発委員会(委員長:(独)建築研究所理事長
村上氏)」において、平成21年度からの3年計画で研究開発が進められている。
実際に、つくば市の建築研究所敷地内にLCCM住宅のデモンストレーション住宅(木造在来工法2階建て/延床面積143平米)が建設され(平成23年1月末頃竣工予定)、竣工後は生活状態を再現した上で、環境性能を計測する予定とのことです。
様々な設計手法や技術としては、熱的緩衝領域を滞在時間の短い動線空間とするなどアクティビティと温熱環境を重ね合わせたレイヤ状の空間構成、レイヤの開閉による着せるやライフスタイルに即した多種のモード(季節や時間、不在時や就寝時など)の実現などが提案されています。(レイヤとは、外壁や内壁において、断熱・気密・日射制御・防犯・視線制御・遮光・遮音などの機能があるもの)また、自然エネルギー利用としては、太陽光発電パネルを一体化した屋根、換気塔による自然換気となっています。
その他、ミサワホーム(株)もLCCM住宅として、「エコフラッグシップモデル」を完成させており、2030年の地球生活を見据えたコンセプト住宅と位置づけています。また、積水化学工業(株)も首都大学東京と共同で「環境エネルギー情報表示システムを備えた太陽光発電住宅における住まい手の意識と行動に関する研究」を行っているそうです。
須永研究室では、住宅の他にも、文部科学省と環境省などが推進している環境への負荷低減に対応した学校施設である「エコスクール」についても、実態調査を行い、日除けや自然通風を利用したエコスクール化の手法について研究されているとのことで、膨大な数の既存建築の省エネルギー化の意義と効果はかなり大きく、世界規模で行って頂きたい!と思いました。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
|