■基調講演「セラピー用ロボット・パロによる
ライフ・イノベーションの国際展開」
産業技術総合研究所 知能システム研究部門
主任研究員 柴田 崇徳氏
高齢化社会を迎える日本では、今後少子高齢化による介護者不足が想定され、人手不足の解消、および介護者の負担軽減のためにもロボットによる生活支援技術に対するニーズは増えていくと思われます。
産業技術総合研究所が開発したあざらし型ロボット「パロ」は、視覚・聴覚・触覚などのセンサーによって、呼びかけに応えて鳴いたり、体を動かすなど、人の反応に対応した動きをします。ちょうど赤ちゃんと同じような重さで、一つ一つ手作りされ、抱き心地や温かみなど感性に訴える部分も重視して作られたサービスロボットです。
ペットとしてだけでなく、セラピーロボットとしても、介護施設や小児病棟などに導入されています。高齢者とのふれあいのなかで表情の乏しかった方に笑顔がもどったり、パロを介して高齢者と介護者のコミュニケーションが促進されるなどの効果が確認されています。
日本だけではなく、海外でも「パロ」はセラピーロボットとしての効果を上げています。
日本や韓国ではペットとしての認識が高いのに対し、ヨーロッパでは、セラピーロボットとしての評価が高いことも特徴です。特にデンマークでは、ライセンス制度を設けるなど専門性の高い扱いをしています。このような制度もあり、ヨーロッパでは認知症の患者や高齢者へのセラピー効果が高いことが、心理的(うつの改善など)、生理的(血圧の安定や、ストレス減)、社会的(コミュニケーションの促進)な面でも実証されています。
宗教的な問題を持たない動物であることもあり(たとえば、豚が不浄とされる宗教もある)今後ますます、セラピーロボットとしての活躍の場は広がっていきそうです。
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