産学連携レポート第4回は「ミラーインタフェース」について(独)情報通信研究機構の上田繁氏(3月末離籍)、NTTの小野澤氏、原田氏、細谷氏にお話を伺いました。
■産学連携の経緯はどのようなものですか。
この連携プロジェクトは、「ミラーインタフェース」の基礎的な技術を持っていたNTTマイクロシステムインテグレーション研究所が、(独)情報通信研究機構つくばリサーチセンターと共同研究契約を締結し、連携して(独)情報通信研究機構の持つ10Gの超高速ネットワーク「JGNUネットワーク」上で、実験をすることになったところから始まりました。これにアキバテクノクラブメンバーで8階に入居しているつくば市東京事務所が加わり(この実験は現在終了しております)、3者による連携となりました。
■【ミラーインタフェース】の技術的な特徴はどのようなものですか。
ミラーインタフェースの『ミラー』は、カメラでとった映像を鏡像反転していることを示したものです。別々の場所で撮影し『鏡像反転』した映像を『半透明化』し『重ねて表示』することで、誰もが、遠隔地であることを意識せずに同一空間にいるかのような感覚でコミュニケーションをとることができるコミュニケーションツールです。
似たようなコミュニケーションツールにテレビ会議システムがありますが、テレビ会議システムでは、ディスプレイには相手の顔だけが映り、自分自身は子画面に映し出されているに過ぎません。このミラーインタフェースでは、相手側も自分側も重なってディスプレイに映されるため、映像のなかでは、あたかも同じ空間にいるかのように映し出されています。(※写真1参照)このため、『これ』『それ』『あれ』などの指示語を同一空間にいるときと同じように用いて、指し示しながら会話することもできます。
またこのシステムには『タッチレスタッチ』ともいうべき機能も備えられています。例えば、家電製品の遠隔操作技術とのマッチングを行うことにより、画像に映っている自分の手(タッチレス)で遠隔地の家電製品のボタン操作を行うこともできます。
■どのような実験が行われ、利用者の反応はどうでしたか?
遠隔講義システムの実験では、つくば市が募集した地元主婦に対し、子育て支援についての講義が行われました(※写真2参照)。この実験では講師(筑波大学准教授)と受講者(主婦グループ)が離れた場所にいるにも関わらず、同一テーブルを囲んでいるかのように講義が行われました。講師・受講者とも互いの視線を感じながらディスカッションを行えるため、誰が誰に対して話しているのかがわかります。さらに、1名の講師が複数のグループを指導する実験も行われました。講師は、各グループを映すカメラの切替操作を行うことにより、同じ席にいながら、各グループの講師としてディスカッションに参加することができます。実験に参加した主婦からは離れているにも関わらず分かりやすかったとの感想がありました。講義内容が子育て支援であったこともあるのですが、実証実験の後、講師は主婦層から講演依頼を受けることが多くなり、筑波大学とつくば市民との連携も密になったと聞きました。
遅延検証の実験では、遠隔地間で同じ動作をする必要のある体操指導で検証をおこないました。映像が遅延した場合の遅延の感じ方、その遅延をどうすれば軽減できるか、遠隔地であってもストレスなく一体感を持つためにはどのような要件が必要であるか等を明らかにすることができたと思います。
■ダイビルとつくば市を結んでの実証実験は我々アキバテクノクラブのメンバーにとっても記憶にのこるところですが、実証実験の手ごたえはいかがでしたか?
平成19年2月21日に秋葉原ダイビル8階(つくば市東京事務所)と、つくば市にある(独)情報通信研究機構つくばリサーチセンターをJGNUで結んで行われたロボット遠隔操作実験(協力−茨城県立つくば工科高校、千代田区いずみ学童クラブ)では、子供たちがあっという間にバーチャルな共有空間に入り込み、遠隔地にあるロボットの操作を違和感なく楽しんでいたことが非常に印象的でした。終了時には、子供たちが別れを惜しみ、まさに空間が一体化していたことを証明していました。(※写真3参照)
■今後の展開はどのように考えていますか。
今後、引き続きより実践的な実証実験等を行い、商品化にむけた検討も行われることになると思います。
遠隔地と一体化できるこのシステム、出かけたくても出かけられない方たちに有効なツールであることは間違いないでしょう。
携帯電話のようにいつでも身近にあるもので、このシステムが使えるようになるのもそう遠くないことだと思います。
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