■ 欧州の携帯電話通信方式GSMが普及したカラクリ?!
日本は「科学技術大国ではあるが、科学技術立国ではない」と語られる妹尾先生より、最近の交流会の基本テーマであるオープンイノベーションシリーズの一環として、国際がご専門の兵庫県立大学経営学部准教授 立本博文氏に中国の携帯市場で勝てたヨーロッパのからくりなどをお話いただく旨ご紹介があり、「国際標準化とコア技術管理:GSMの中国導入の事例」というご講演タイトルのもと6月の交流会もスタート致しました。
携帯電話の事例では、韓国や台湾、中国などの新興国企業が競争力を得ている中で、技術・標準開発に貢献した日本企業の国際競争力が弱くなっているとのことで、開発された技術のどこをオープン化してどこをクローズ化するかについて、日本企業の戦略はインテル型のオープン化戦略を取ったヨーロッパ企業の戦略に比べて、全く見劣りするものであったとのことです。
具体的には携帯電話の場合、市場は携帯電話機の端末市場と基地局設備と交換機によるインフラ市場によって構成されているが、ヨーロッパ企業は携帯電話の端末市場の技術と製造方法をすべてオープン化とパッケージ化し、インフラ市場はクローズ化するという戦略のなかインフラ市場で基地局と交換機をフルターンキー方式で受注拡大したのに対し、日本企業は小型組み込み型が得意ということで端末市場に進出する戦略をとり、当初はヨーロッパ市場で大きなシェアを占めたものの、オープン化による新興国企業の新規参入、安値攻勢、そして新興国企業の保護育成政策の前に、新興国市場のシェアを奪われて、ヨーロッパ市場も新興国製品が出回ることでシェアを失い、結局国際競争力がなくなってしまったとのことで、それ以外のDVDや液晶パネル、太陽光発電用パネルなどの最新ICT製品群でも同様なことが起きている、とのショッキングな現実を報告されました。
その様な中、デジタル携帯電話世代で、現在、最も普及している欧州の通信方式GSMが標準規格競争で中国に採用され、欧州の通信設備企業が提供するを用いて、世界最大のオペレータである中国移動通信が1995年という早い時期にデジタル移動通信サービスを立ち上げることが可能となったそうです。
そして、中国市場にGSMが導入されて10年以上が経過しているにもかかわらず、欧州企業の基地局市場における競争力は依然高い状況だそうです。
中国のGSM標準の導入によって、便益がもたらされたのは、中国のエンドユーザーと中国のオペレータと中国の携帯端末メーカと欧州の通信設備メーカであり、欧米企業にロックインされた中国の通信設備メーカは、海外市場と新規格(3G)に活路を見出しているそうです。
は国際競争力を得るうえで、避けられない課題でもありチャンスでもあるのですね。
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