『ヒット商品創造の裏側』
夏目 幸明氏
〔フリーライター〕
■ ヒット商品の秘密
『UN・DON・COM.』とは?「運・鈍感力・根性とコミュニケーション」これがヒット商品の秘訣と唱えるのは、今回の講師である、ヒット商品評論家としてラジオや雑誌などで活躍中のフリーライター夏目
幸明氏です。実際にDIME(小学館)で『UN・DON・COM.』のタイトルでヒット商品開発インタビューを掲載中です。
夏目氏は、ヒット商品ができるポイントは以下の5つだと事例を挙げながら力説されました。
@トレンドがヒット商品をつくる
2007年以降ガム離れが続いていたが、ロッテの「Fit's」の柔らかく味の持続が40分のガムが噛む力が弱くなった10代に人気となり、ヒット商品となってからガム市場全体が活性化されました。またサントリーの角ハイも、簡単に炭酸と配合できるハイボールタワーの開発や小雪のCMによる宣伝効果もありヒット商品へ。不況の時期にビールより原価が安いこともあって普及したという、時代の変わり目にトレンドが変わる例として挙げられました。また、東芝の共働き夫婦に特に支持される静かな掃除機がヒットしたのも、夜中に掃除をする共働き夫婦にとって役に立つことを発想の原点としたところに勝因があった様です。
そして、コカコーラの「い・ろ・は・す」もエコをコンセプトにしたことで、ヒット商品となりました。採水地はエリアによって異なるが、飲料時は、五角形の組合せによりへこみにくくしかつ一定の大きさに沢山詰め込むことで輸送燃料が少なくて済むこと、飲み終わったら12gの薄さ(通常は24g)のペットボトルを絞ってつぶせるという五感で感じるエコポイントが売りです。開発担当者はこのエコの視覚化ができた瞬間、「売れた!」と思ったそうです。
A トレンド+技術力がヒットをつくる
花王の技術者がずっと研究していたすすぎ1回で済む落ちやすい洗剤とトレンドのエコが幸せに結びついて、「アタックNeo」が生まれました。
キリンフリーもノンアルコールビールとしてヒットしていますが、やはり作りだすまでには、かなりの技術力を要しました。醸造のプロが麦汁を研究し、香りのプロが発酵しなくてもビールに似た香りを作りだしたり…でも似た香りではキリンとして商品化が認められず、微妙な香りの調整としてオフフレーバーをちょっと入れてみたところビールそのものの香りになったそうです。こうしてできたノンアルコールビールですが、そのきっかけは企業の「社会から飲酒運転をなくそう!」という強い社会貢献の意志が働いていました。その企業の動きと、飲酒運転の悲しい事故が起こって、飲酒運転撲滅の動きが世の中に広がった時期に商品化できることもヒットする重要な要素だそうです。
企業の中には、トレンドがやってくるまで技術を出さないということも企業戦略としてあるそうです。
B 変化が細かくなってきたら、量的変化から質的変化が求められる
どういう意味だろうか?たとえば、大分の日本フィルムは、1分間にいかに多くのゴミ袋を量産できるかで競合してきたが、1枚単位で凌ぎを削る様な細かい勝負になってきたら、目先を変えて、把手つきのゴミ袋を作ってヒットさせたという様に、ある段階から質的変化で勝負することを考えた方がヒット商品につながるということでした。
ゴミ収集者のけがを減らすことから結び目ができる様に考えた商品らしいのですが、消費者にとっても使いやすい便利商品ということでとても人気です。
他にも、ハードの進化に伴う性能の競争から、任天堂は画像処理の微妙な進化にともなうコンテンツの質の競争に変えることで業界の流れを一変させました。PS3とWiiを比較して、ゲームを個室でひとり楽しむものから、任天堂はリビングで複数で楽しむ場を移したことにより、ヒット商品につながりました。デジカメも画素数の競争から、夜景がきれいに撮れることなど機能で付加価値をつけ始めているそうです。
C マニュアック消費に注目しよう!
インターネットで物を買うという消費傾向が生んだ大きなトレンドで、たとえば、シチズンのアストロデアという天体時計が売れていますが、シチズンの天体マニアの方が作った腕時計で、当初の5000個がすぐ売れてその後も毎年の現定数販売につながっているそうです。消費者は自分にぴったり合ったものを求める様になり、ネットで探すとマニュアックな消費に対応して商品を作りだしてくれている世の中になっているとのことでした。
テレビ番組の多様化で、見たい番組を見られるようになった様に、強烈な思いで開発した商品を欲しいと思って探してくれる消費者がいるという構図が成立している様です。他にもコクヨの遺言書キットもネット上で話題になって売れているそうです。
D ユニクロにならえ!ユニクロローラー作戦。
普通では真似できないが、ユニクロがすごいのは「いいものを安く売っている」ところ。具体的には、フリースの販売計画を当初からスケールメリットを盛り込んで安く販売したという作戦だそうです。これは眼鏡業界でも当てはまり、GINSの眼鏡は、スイスのカテーテルの素材を使って、曲げても戻る眼鏡を作っている。大量発注して曲がる上に軽い眼鏡を安価で広告宣伝費はしっかり使って売り出し、成功している例だそうです。
他にも、売れる価格帯を社会実験しながら決めていったマクドナルドなども、ユニクロなどと同様に市場を一変させている会社のひとつとのことでした。ただ、なかなか一定規模以上の企業でないとこの作戦はできないため、最後のポイントとされたそうです。
(写真をクリックしていただくと会場の様子がご覧いただけます)
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