2010/11/8 AICOS2010 vol.3
『機能性材料のイノベーション
〜価値形成進化とバイオミメティクスの可能性〜』
浅見正弘氏/富士フイルム株式会社 執行役員
先端コア技術研究所 所長
<トークセッションモデレーター>
妹尾堅一郎氏/アキバイノベーションカレッジ 校長役
東京大学大特任教授、NPO産学連携推進機構理事長
■ 「脱・写真フィルム」化
第3回となるAICOSは、富士フイルム株式会社の浅見氏に、「脱・写真フィルム」化を進め、重点領域として取組んでいる高機能性材料事業の将来性について、技術や経営戦略などの観点から、『機能性材料のイノベーション』と題してご講演いただきました。
「写真フィルム」から「デジタルカメラ」へ移行する中、売上高も落込をカバーするために、企業理念が「映像と情報の文化創造」から「クオリティ
オブ ライフの向上へ寄与」へと変わり、社名から「写真」の文字がなくなり、成長戦略策定と構造改革実行及びR&D強化がトップダウンで推進されたとのことでした。
富士フイルムを変えた第一の波は、デジタル時代の到来を見据えたデジタル技術の自社開発として、デジタルX線画像診断システムの「メディカルシステム分野」、CTPプレートの「グラフィックシステム分野」、デジタルスチルカメラやデジタルミニラボなどの「イメージング分野」を掲げ、デジタル化に対する3つの戦略とされたとのことです。
この技術開発には、感光材料事業を持続するための開発強化と、感光材料でもデジタルでもない新事業の構築という2つの開発方針があり、前者がインプルーブメントで、後者がイノベーションであると妹尾先生もその方針を分析されました。
そして、現在の富士フイルムグループの事業構成は、カラーフィルムやフォトフィニッシングなどの「イメージングソリューション」が17%、メディカルシステムやライフサイエンス、グラフィックシステムや最近成長著しいフラットパネルディスプレイ材料などの「インフォメーションソリューション」が39%、オフィスプロダクトやプリンター、プロダクションサービスなどの「ドキュメントソリューション」が44%となっているそうです。
中でも、高機能材料として、ルーツともいうべき「フィルム」を活用し、特性である包む、保護する、耐熱などの性質から光学や磁気、圧力などに関する機能性フィルムの実例をご紹介いただきました。太陽光電池のバックシートや低反射フィルムや磁気記録テープなど多岐にわたり活用されているそうです。
また、ヘルスケア材料については、ナノ分散による新たな価値として、化粧品やサプリメントなどを提供しています。この新規事業の裏側には、いままで培ったフィルム技術が応用されていて、たとえば、CoQ10の約1,000倍!ともいわれる「アスタキサンチン」のナノ粒子化と、安定配合を両立して「アスタリフト」というスキンケア化粧品が作られています。さまざまな働きをもつ成分を、超微粒子化し、とても薄いフィルムの中の必要な階層へ安定して配置することで、すぐれた写真フィルムは作られるそうですが、この独自のナノテクノロジーを応用して商品化されたそうです。
今後、新たな取り組みであるバイオミメティクス(生物模倣)技術の可能性についても期待したいと思います。
(写真をクリックいただくとご講演の様子がご覧いただけます)
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