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2024年度第1回アキバテクノクラブオープンセミナーを開催しました                


講演の様子

2024/5/22
2024年度第1回アキバテクノクラブオープンセミナー
 
講師:荻野  健一氏
/京都芸術大学教授、デジタルハリウッド大学名誉教授

テーマ:「デジタルハリウッドの20年とこれからの10年」

■デジタルハリウッドでの20年
 荻野氏とデジタルハリウッドとの出会いは、テレビ業界がデジタル化に向け動き出した2000年代。デジタルに詳しい人材獲得を目的にデジタルハリウッド大学に声をかけたことに始まる。 今回のセミナーではデジタルハリウッド大学と出会ってからの20年、手掛けてきたプロジェクトを振り返った。

■スマホを使ったまち回遊システム
   2007年iPhone発表。荻野氏は今後iPhoneが時代の中心になる。すなわち、これからは、マスメディアからパーソナルメディアに移行すると予測した。     2006年、デジタルハリウッド大学大学院の学生とおこなったプロジェクトが、犬の散歩コースを位置情報によって記録させ、バウリンガルで犬の気分を分析し、それが犬の日記になるいうものだった。
   このプロジェクトをきっかけに「位置情報をつけたまち歩き」の可能性を見出し、その後のゼミの研究テーマとなっていった
   どのようなときにニーズが購買に結びつくのかということを学生とともに研究し、これを観光に活かしていくための手法として、観光コンテンツにナラティブアプローチを取り入れ、様々なメディアでコミュニケーションを行い、まちの劇場化を図るという考え方を実践した。
   2011年にはAR技術、地図表示(画像であれば地図にしてGPSに連動させて案内をすることができる技術)などを使って、秋葉原にある都市伝説をつかったまち歩きのアプリを作り、アキバテクノクラブと一緒にまち歩きを実施。これが最初のまち情報メディア連動回遊システムとなる。その後、JTBとタッグを組んで、墨田区の怪談をモチーフにしたまち歩きを実施した(アキバテクノクラブも参加)。

(写真をクリックいただくと講演の様子がご覧いただけます)

講演の様子

■ 地域資源としてのサブカルチャー、アジアの視点と若者の視点
  中央線のサブカルチャーの研究を続けていく中で、東京都の地域資源発掘プログラムの資金を使って中野文化祭を実施。日本中のサブカルチャーを集めたイベントとなった。イベントを行うだけでなく、これを記録する目的で、「週末編集部」を立ち上げ、女子大生の目線で中野を取材。地域の中に入っていって、取材し、映像化・コンテンツ化していった。 豊島区でもトキワ荘を地域資源にするためのプロジェクトに取り組み、どうやったら、人を集めることができるのかという視点で、まち歩きや、イベントの創造に取り組んだ。 ここでアジア人留学生の心に刺さったのは「マンガの世界がここにある」昭和レトロなものだった。 日本の文化には世界の様々な文化を編集しなおして日本流に変えていくという特徴がある。昭和歌謡が世界で受けているのは、各地の文化の名残を漂わせたメロディに懐かしさを感じるからなのかもしれない。

■ 地域資源としての歴史コンテンツ
   ここ数年は、運慶と横須賀のつながりも研究し、文化庁の多言語解説事業として、運慶の仏像を観光資源として生かす取り組みを行った。ただ解説するだけではなく、ギミックとして、日本の文化をマンガで描き、ARでマンガを読める仕掛けを行った。その後鎌倉でも学生に魅力的なキャラクターを描いてもらい、マンガによる解説を実施するなど、歴史的な観光資源をデジタルメディアを使って魅せる取り組みをおこなっている。

   ほかにも、たとえば、北前船の研究や、ローカルヒーロ―を作ったり、今後経済を回していく原動力になるであろう腐女子の研究にも取り組んだ。クリエイターが企業に入るための仕組みづくりや、クリエイターの支援にも力を注いだ。日本のモノづくりに触れる機会や場所づくりなど、様々な取り組みを行った20年だった。  

(写真をクリックいただくと講演の様子がご覧いただけます)

講演の様子

■ これからの10年
 基本的には自分が考えていたメディアの考え方とそれを使ったコミュニティとその先にある経済を回していくためには地方が元気にならないと意味がないと思うので、地方活性化に力をいれていきたい。  そのためには、日本文化とテクノロジーの組み合わせ、アジアで活躍するクリエイターの育成、地方文化のアジア展開。そのための大阪・関西万博を契機とした国際交流が大事になってくる。また継続的な聖地創造を事業化することを考えている。
 AIによる新時代により、これに載せて日本文化の国際展開を果たし、最終的には世界的価値の融合やアジアの新世紀をもたらすことを期待している。
 具体的な事業としては、トキワ荘大学まちゼミナールや、学生の視点でまちをコラージュするMXテレビの企画、アジアのポップアートシーン展開(クリエイターの育成)、日本のみたてなどの文化を海外展開する事業、神話から始まる日本文化のグローバル展開(地域に古来からある文化のコンテンツ展開)、 現在世界で最も行動力のあるアジアの女子の共感を醸成する体験をインバウンドの柱として発掘・開発していこうと考えている。

■ 質疑応答では
まちおこしを頑張っても、まちの文化に興味のない住民が増えて、文化が壊れていく。このジレンマをどう考えるか。観光公害の問題にどう取り組めばよいかといった質問が挙げられました。

これに対して、荻野氏の回答は、文化を守るのではなく、若い人たちが興味をもつ形に変え、未来化していくやわらかい発想が必要。長い目でみて、文化を支える若い人達を作っていくことも大事。また観光コンテンツに対して、なぜそこにこのコンテンツがあるのか、住民が参加して考えることで自分事にすることが大事ということでした。

その後懇親会に場を移し、議論はさらに盛り上がることとなりました。

(写真をクリックいただくと講演の様子がご覧いただけます)

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